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「慰安婦」・朝鮮植民地支配の責任を曖昧にしない日朝国交正常化交渉を求める 緊急声明



内閣総理大臣 小泉純一郎様
外務大臣   川口順子様



 日朝首脳会談からすでに2ヶ月が経とうとしています。日朝平壌宣言に日本政府は「過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明した」と明記しました。しかし、金正日総書記が日本人拉致の事実を認めたため、拉致に対する怒りと非難が巻き起こり、正常化交渉に暗雲がたちこめています。

 どのような国家であっても、個人の人権を踏みにじる国家暴力を決して許すことはできません。私たちは、拉致被害者の人権回復、平和に生きる権利の回復を願うものです。だからこそ、私たちは、「慰安婦」や強制連行の被害者が同じ苦痛と悲しみを受けたことを、今こそ強く自覚する必要があります。この拉致事件を口実に、「慰安婦」や強制連行などの過去の国家犯罪、そして植民地支配の責任が反故・相殺されることは断じてあってはなりません。

 日本人拉致問題のセンセーショナルな報道によって加速された反北朝鮮感情は、朝鮮人学校に通う在日朝鮮人の子供たちにさえ向けられ、在日朝鮮人(朝鮮籍・韓国籍・日本籍を含む)が朝鮮人として生きる生存権さえをも脅かす事態になっています。朝鮮植民地支配から100年が経とうとしている現在、なぜ、日本に約64万人もの朝鮮籍、韓国籍の朝鮮人が暮らしているのか、なぜ、帰化する人々が増え、人々が在日朝鮮人として生きにくい状況が続いているのか。それは戦後半世紀という時間を経過してもなお、植民地支配とその下に行われた非人道的な過ちを正面から反省し、植民地支配責任を直視した歴史認識を日本社会に育ててこなかったからに他なりません。戦後50年以上が経ったにも関わらず、過去の過ちが未だ清算されていないことにより、被害者は更に犠牲と苦痛を強いられています。

 このような事態を招いているのは植民地責任・戦争責任と真摯に向き合ってこなかった日本政府の外交姿勢にあり、歴史認識に欠くばかりでなく権力批判を弱めているメディアの報道姿勢にあります。日本人の被害者意識を一方的に扇動しているメディア報道は、まさに9.11を想起させるものです。メディアが北朝鮮に対する敵意を国民感情として醸成していることに、私たちは大きな危機感を抱いています。

 平壌宣言は過去の犯罪に対して「すべての財産、請求権の放棄」を相互に確認しました。これは植民地支配下の犯罪と責任を曖昧にし、経済協力という形をもって妥結した1965年日韓基本条約を朝鮮半島の歴史決着として終結させたといえます。過去の犯罪をお金の問題に転化させるこのような決着により、正当な補償を求めてきた「慰安婦」被害女性たちの声が無化され、更に歴史に置き去りにされていくことを黙認してはなりません。

 2000年12月、東京で開催された日本軍性奴隷制を裁く「女性国際戦犯法廷」には、北朝鮮在住の「慰安婦」被害女性朴永心さんと金英淑さんが参加され、壮絶な当時の被害体験を語られました。判決文には、被害者がこれ以上疎外されないよう、正義が被害者を放置しないよう、日本政府に対して真相究明と公開、真摯な謝罪と国家賠償の実現、再発防止のための処置、ジェンダー教育の実施等々の勧告が付されました。さらに判決は、「慰安婦」問題は二国間条約により解決したものではないこと、国際法上の個人請求権は放棄されていないことを明確に指摘しています。

 私たちは一方的な報道により、在日朝鮮人をこれ以上窮地に陥れたり、差別意識を掻き立てることがないよう訴えると共に、「北朝鮮を攻撃しても良い」という石原都知事の暴言に強く抗議します。また、平壌宣言が「慰安婦」犯罪をはじめとする植民地支配下の国家犯罪を金銭の問題にすり替えて、「慰安婦」被害者が再び置き去りにする形で決着をはかることに断固反対します。日朝国交正常化交渉において「慰安婦」問題の解決が「経済協力」の名の下に曖昧にされることのないよう、「女性国際戦犯法廷」の判決が示した国際社会の認める原則に基づいて被害者に対する過去の清算が誠実に進められることを、強く日本政府に求めます。




2002年11月21日

「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW-NETジャパン) 

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