訴  状

学校現場に内心の自由を求め、「君が代」強制を憲法に問う国家賠償請求及び戒告処分取消請求事件



 当事者の表示  別紙目録のとおり

訴訟物の価格   金 一八一〇〇〇一円
貼用印紙額    金   九八六〇〇円

 一九九六年一一月二二日


 福岡地方裁判所      御 中


請求の趣旨

第一、損害賠償請求

一、被告北九州市、被告高橋義幸及び被告平田章は、連帯して、原告稲田純に対し、金九万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二、被告北九州市及び被告秋永知之は、連帯して、原告井上友晃に対し、金八万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
三、被告北九州市は、原告梶川珠姫に対し、金五万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
四、被告北九州市は、原告石尾勝彦に対し、金一円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
五、被告北九州市、被告村尾稔は、連帯して、原告友延博子に対し、金十万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
六、被告北九州市は、原告佐藤光昭に対し、金五万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
七、被告北九州市、被告山本純二は、連帯して、原告牟田口カオルに対し、金一三万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
八、被告北九州市及び被告川原正博は、連帯して、原告安岡正彦に対して金五万円を、被告北九州市及び被告扇谷兼二郎は、連帯して、原告安岡正彦に対し、金四万円を、それぞれこれらに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
九、被告北九州市、被告川原正博は、連帯して、原告原田敬二に対して、金五万円を、被告北九州市及び被告扇谷兼二郎は、連帯して、原告原田敬二に対し、金四万円及びこれらに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
十、被告北九州市及び被告川原正博は、連帯して、原告導寺孝暁に対して金二万円を、被告北九州市及び被告扇谷兼二郎は、連帯して、原告導寺孝暁に対し、金二万円を、及びこれらに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
一一、被告北九州市及び被告川原正博は、連帯して、原告原博一に対し、金四万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
一二、被告北九州市及び被告川原正博は、連帯して、原告油谷芳弘に対して、金一万円を、被告北九州市及び被告田郷利雄は、連帯して、原告油谷芳弘に対し、金一万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
一三、被告北九州市は、原告安倍和宏に対し、金七万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
一四、被告北九州市及び被告徳本正義は、連帯して、原告藤堂均に対し、金二万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
一五、被告北九州市、被告門司驍武は、連帯して、原告山根弘美に対し、金三万円及 びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金 員を支払え。
一六、被告北九州市は、原告稲葉とし子に対し、金五万円及びこれに対する本訴状送 達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
一七、被告北九州市は、原告田中民平に対し、金二万円及びこれに対する本訴状送達 の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
一八、被告北九州市は、原告北九州がっこうユニオン・ういに対し、金一万円及びこ れに対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を 支払え。

第二、処分取消請求

一、被告北九州市教育委員会が、一九八九年七月二〇日付で、原告稲田純になした戒告処分を取り消す。
二、被告北九州市教育委員会が、一九九二年七月二〇日付で、原告安岡正彦及び原告原田敬二になした戒告処分を取り消す。
三、被告北九州市教育委員会が、一九九三年七月二〇日付で原告石尾勝彦、原告佐藤光昭及び原告友延博子になした戒告処分を取り消す。
四、被告北九州市教育委員会が、一九九四年九月五日付及び九月六日付で原告稲田純、原告梶川珠姫、原告石尾勝彦、原告牟田口カオル、原告安岡正彦及び原告原田敬二になした戒告処分を取り消す。
五、被告北九州市教育委員会が、一九九五年七月二〇日付で原告井上友晃及び原告石尾勝彦になした戒告処分を取り消す。
六、被告北九州市教育委員会が、一九九六年七月一九日付で、原告井上友晃、原告石尾勝彦、原告友延博子及び原告牟田口カオルになした戒告処分を取り消す。

第三、訴訟費用は被告らの負担とする

 との判決ならびに、第一項につき仮執行の宣言を求める。


請求の原因


第一、当事者

 本件不法行為時、 
1.原告稲田純は、北九州市立千代小学校及び同熊西小学校に、
  原告井上友晃は、同平野小学校に、
  原告梶川珠姫は、同熊西中学校に、
  原告石尾勝彦は、同小倉南養護学校に、
  原告友延博子は、同高須小学校及び同二島小学校に、
  原告佐藤光昭は、同富野小学校に、
  原告牟田口カオルは、同小倉北養護学校に、
  原告安岡正彦は、同松ケ江南小学校に、
  原告原田敬二は、同松ケ江南小学校及び小森江東小学校に、
  原告導寺孝暁は、同松ケ江南小学校に、
  原告原博一は、同松ケ江南小学校に、
  原告油谷芳弘は、同松ケ江南小学校及び同大積小学校に、
  原告安倍和宏は、同城野小学校に、
  原告山根弘美は、同南小倉小学校及び同清見小学校に、
  原告稲葉とし子は、同松ケ江中学校に、
  原告田中民平は、同千代小学校に教諭として勤務していたものである。
  原告藤堂均は、同沢見小学校に、校務員として勤務していたものである。
  原告北九州がっこうユニオン・ういは一九九四年九月結成された学校労働者の労働組合であり、一二月一日付で人事委員会登録された職員団体である。

2.被告高橋義幸は、同千代小学校に、
  被告平田章は、同熊西小学校に、
  被告秋永知之は、同平野小学校に、
  被告村尾稔は、同高須小学校に、
  被告山本純二は、同小倉北養護学校に、
  被告川原正博及び被告扇谷兼二郎は、同松ケ江南小学校に、
  被告田郷利雄は、同大積小学校に、
  被告徳本正義は、同沢見小学校に、
  被告門司驍武は、同南小倉小学校に、校長として勤務していたものである。

第二、損害賠償請求


第1、本件に至る経緯

  一、日本国憲法の成立と戦後の教育理念
 戦前の大日本帝国憲法の下での「日の丸・君が代」を侵略のシンボルと した天皇制国家主義教育は、多くの悲惨な結果を自国民及びアジア諸国 民・諸民族に強制した。その結果わが国はこれらの侵略戦争を反省し、 一九四五年、平和主義、民主主義、基本的人権の尊重を原理とする日本 国憲法を制定した。
 戦後の民主教育は憲法の理念及び教育基本法に依拠して出発した。戦後の教育 改革は、国家による一元的な支配を否定し、公教育を国家行政の配慮する領域 から国民の良心の自由の領域に置き換えた。そして、公教育の積極的機能を個 人の人格の完成だとし、そのことを通して個人の価値を尊び、自主的な精神に 満ちた平和や真理、正義を愛する国民を形成することとした。

  二、日本教職員組合(以下、日教組という)の活動
 1.しかしながらその教育理念は、地域や家庭、学校現場に十分根づくことなく、わが国は、一九五〇年朝鮮戦争勃発を機に再軍備に踏み出し、高度経済成長期に向かってひた走り、政治の反動化によって日本の平和と民主主義、民主教育 が大きな危機に直面したのである。
 2.一九五一年、福教組の上部団体である日教組は「教え子を再び戦場へ送るな」のスローガンを採択し、日本の平和と民主主義を守るためにさまざまな民主教育創造の組織的活動を提起した。
 3.福岡県教職員組合(以下、福教組という)も当然この方針を支持し、日教組運動の先頭として闘ってきた。
 4.一九七八年の学習指導要領改訂などの動きとあいまって、被告市教委は文部 省の意向をいち早く受け入れ、「日の丸・君が代」を導入していった。
 5.日教組及び福教組はそれらの反動的な動きに対しても「国家優先の道徳的実 践力が教育の基本にすえられることは、民主的な人格の形成を願う国民の要求 に答えるものではないし、『君が代』を『国歌』としていることは問題であ る」として指導要領の撤回を文部省に要求し、交渉を行うなどの活動を展 開してきていた。

  三、原告らの教育活動
 1.原告らは、同小・中・養護学校で勤務する学校労働者であり、かつ福 教組(原告石尾を除く)及び北九州市職員労働組合の組合員であった。
原告らは、「子どもたちを再び戦場へ送るな」という日教組のスロー ガンのみならず、憲法及び教育基本法の平和主義、個人の尊重、個人の 人格の完成をめざす教育を理想とし、実践してきた。
 2.また、あらゆる差別を許さないという姿勢から、北九州市の目指す「同和」 教育においてもその中心となって推進するなど、「障害」児教育、「在日」朝 鮮人教育などの人権教育にも熱心に取り組んできた。
 3.原告らにとって、これらの教育理念実践を担うものとして、また、学校労働 者である前に一個の人間であり、各自の思想・信条及び宗教をもつ者として、 自らの良心をかけて天皇崇拝の象徴である「日の丸・君が代」に反対するこ とは、憲法に保障された当然のことであった。
4.原告らは、かねてよりその意思表示として卒業式・入学式における「君が代」 斉唱を拒否し着席してきていた。
5.一九八五年以前の学校現場においては、職員会議などでも「日の丸・君が代」 を学校儀式に持ち込むことの違法・不当性が論議され、原告らの着席行為に対 して職務命令が出されることもなければ、卒業式・入学式当日も校長らから 着席行為が問題にされることもなかった。
6.当時、北九州市内の城野小学校や富野小学校学校をはじめとする数校の学校 で職員のほとんどが着席していたが、何ら問題にならなかった。

  四、文部省の「君が代」徹底通知と被告市教委による「四点指導」
 1.一九八五年、文部省は当時の高石邦男初等中等教育局長名により各教育 長に対し、「入学式及び卒業式において、国旗の掲揚や国歌の斉唱を行わ ない学校があるので、その適切な取り扱いについて徹底すること」との、 いわゆる「徹底通知」(以下、徹底通知という)をなした。  2.高石邦男教育長膝元である被告市教委は、この文部省の「徹底通知」をいち 早く受け入れ、その直後にも被告市教委指導第一課長名で「卒業式・入学式に おける国旗掲揚と国歌斉唱の実施について(通知)」を各公立小・中・高等学 校へ通知した。被告市教委は通知とともに、卒業式・入学式の式次第をはじめ とした「四点指導」と言う名の「強制」を行った。
 3.その内容は、国旗掲揚の位置は式場のステージ中央とし、児童生徒が国旗 に正対するようにする。式次第の中に「国歌斉唱」を入れ、その式次第に基づ いて進行を行う。「国歌斉唱」は、ピアノ伴奏で行い、児童生徒及び教師の全 員が起立して、正しく心を込めて歌う。教師のピアノ伴奏で行う。教師は卒業 式に原則として全員参列する、というものである。この「四点指導」の内容は、 文部省の「徹底通知」による「国旗・国歌」の徹底という趣旨をもはるかに逸脱 したものだった。
 4.この通知以降、被告市教委による明らかな「不起立」職員のチェック が始まった。学校現場で校長をしてこの「四点指導」が徹底され、 北九州市内の小・中・養護学校の卒業式・入学式はほぼ画一化され、子ど も中心の教育の象徴であったフロアー形式や式場内の装飾なども消されて いった。また、子どもの「不起立」をチェックする調査・報告までも行わ れている。
 5.これらの通知に基づいて校長会議などで校長らに対して、被告市教委 から「職務命令を出してでも徹底するように」との「強い指導」 が行われ始めた。原告らは従前通り卒業式・入学式の「君が代」 斉唱時に着席したが、これまで、何ら問題視されることのなかっ た原告らの着席に対して、校長らは事前に「起立するように」と の指導と言う名の強制を行った。
 6.こういった「指導」や「調査」は全国的に異例なものであり例がない。

  五、福教組の「日の丸・君が代」反対運動の撤退
 以上のような管理・統制・弾圧によって、「日の丸・君が代」に反対する
 数多くの学校労働者、とりわけ福教組組合員の数も激減していった。被告 市教委による「日の丸・君が代」の強制は、福教組に対する弾圧と表裏一 体をなすものであり、福教組は「処分を出さない闘い」すなわち「起立し て歌わない」へと方針転換していった。

  六、「日の丸」「君が代」をはねかえす会の活動
 1.このような状況の下で、従前通り「着席」を続けてきた原告らは、一九 八八年三月、学校現場をはじめ地域における「日の丸・君が代」の強制に 歯止めをかけ、はねかえすために、「日の丸」「君が代」をはねかえす会 (以下、はねかえす会 という)(後に原告北九州がっこうユニオン・うい へと発展)を結成した。
 2.原告らを中心としたはねかえす会は、学校現場への「日の丸・君が代」の強 制の監視行動、具体的には被告市教委との交渉、被処分者の支援行動、そして 学習会や広がりをつくるための集会・情宣活動など様々な活動に取り組んでい った。組織的にも、連絡先事務所、代表、事務局をおき、ニュース発行も隔月 で行うなど、団体としての組織活動も定着し、実質的に組合準備会の機能をも つようになっていった。
 3.原告北九州がっこうユニオン・うい(以下、原告ういという)は一九九四年 九月はねかえす会を発展したものとして結成され、原告稲田、同井上、同梶川、 同石尾、同友延、同佐藤、同藤堂、同山根は原告ういの組合員となった。
 4.原告ういは一二月一日北九州市人事委員会に職員団体として登録し、被告市 教との団体交渉を重ねてきている。


第2、本件不法行為

  一、本件職務命令
1.原告稲田純について
(一)一九八九年当時同千代小学校校長であった被告高橋義幸は、原告稲 田純に対し、同年三月一八日卒業式当日、「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌ってください。これは職務命令です」 との職務命令を発した。
(二)一九八九年当時同千代小学校校長であった被告高橋義幸は、原告稲 田純に対し、同年四月八日入学式当日「入学式の国歌斉唱時 には『君が代』を起立して歌ってください。これは職務上の 命令です」との職務命令を発した。
(三)一九九四年当時同熊西小学校校長であった被告平田章は、原告稲田 純に対し、同年三月入学式当日「入学式の国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌ってください。これは職務上の命令 です」との職務命令を発した。 

2.原告井上友晃について
(一)一九九五年当時同平野小学校校長であった訴外中西正は、原告井上 友晃に対し、同年卒業式前、卒業式において「国歌斉唱時に は『君が代』を起立して歌ってください。これは職務上の命 令です」との職務命令を発した。
(二)一九九六年同平野小学校校長被告秋永知之は、原告井上友晃に対し、 四月一〇日入学式当日の朝、入学式において、「原則として 職員は全員式に参加し、国歌斉唱時には『君が代』を起立し て心を込めて歌うように」との職務命令を発した。

3.原告梶川珠姫について
(一)一九九四年当時同香月中学校校長であった訴外古城正直は、原告梶 川珠姫に対し同年三月卒業式において「国歌斉唱時には『君 が代』を起立して歌うように」との職務命令を発した。
(二)一九九四年当時同熊西中学校校長であった訴外佐藤五男は、原告梶 川珠姫に対し、同年入学式において「国歌斉唱時には『君が 代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。

4.原告石尾勝彦について
(一)一九九三年当時同小倉南養護学校校長であった訴外池田定巳は、原 告石尾勝彦に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。
(二)一九九三年当時同小倉南養護学校校長であった訴外池田定巳は、原 告石尾勝彦に対し、同年入学式において「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。
(三)一九九四年当時同小倉南養護学校校長であった訴外幡手正博は、原 告石尾勝彦に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。
(四)一九九四年当時同小倉南養護学校校長であった訴外幡手正博は、原 告石尾勝彦に対し、同年入学式において「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。 
(五)一九九五年当時同小倉南養護学校校長であった訴外幡手正博は、原 告石尾勝彦に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。
(六)一九九五年当時同小倉南養護学校校長であった訴外幡手正博は、原 告石尾勝彦に対し、同年入学式において「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。
(七)一九九六年当時同小倉南養護学校校長であった訴外幡手正博は、原 告石尾勝彦に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には
『君が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。 (八)一九九六年当時同小倉南養護学校校長であった訴外大内明は、原告 石尾勝彦に対し、同年入学式において「国歌斉唱時には『君 が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。

5.原告友延博子について
(一)一九九三年当時同高須小学校校長であった被告村尾稔は、原告友延 博子に対し、同年二月二四日職員会議で卒業式において「国 歌斉唱にあたっては起立して心を込めて斉唱してください」 との職務命令を発した。
(二)一九九三年当時同高須小学校校長であった訴外加来豊は、原告友延 博子に対し、入学式において「国歌斉唱にあたっては全員起 立の上斉唱してください。これは職務命令です」との職務命 令を発した。
(三)一九九六年当時同高須小学校校長であった訴外加来豊は、原告友延 博子に対し、同年三月一八日職員朝会で卒業式において「国 歌斉唱にあたっては全員起立の上斉唱してください。これは 職務命令です」との職務命令を発した。
(四)一九九六年現在同二島小学校校長である訴外田尻邦彦は、同年四月 九日入学式前日、「国歌斉唱にあたっては全員起立の上斉唱 してください。これは職務命令です」との職務命令を発した。

6.原告佐藤光昭について
(一)一九九三年当時同富野小学校校長であった訴外松川弘昭は、原告佐 藤光昭に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には『君が 代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。
(二)一九九三年当時同富野小学校校長であった訴外松川弘昭は、原告佐 藤光昭に対し、同年入学式において「国歌斉唱時には『君が 代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。

7.原告牟田口カオルについて
(一)一九九三年当時同小倉北養護学校校長であった被告山本純二は、原 告牟田口カオルに対し、同年卒業式において「国歌斉唱時に は『君が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。
(二)一九九三年当時同小倉北養護学校校長であった被告山本純二は、原 告牟田口カオルに対し、同年入学式において「国歌斉唱時に は『君が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。
(三)一九九四年当時同小倉北養護学校校長であった訴外矢部研一は、原 告牟田口カオルに対し、同年卒業式において「国歌斉唱時に は『君が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。
(四)一九九四年当時同小倉北養護学校校長であった訴外矢部研一は、原 告牟田口カオルに対し、同年入学式において「国歌斉唱時に は『君が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。
(五)一九九六年当時同小倉北養護学校校長であった訴外矢部研一は、原 告牟田口カオルに対し、同年卒業式において「国歌斉唱時に は『君が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。

8.原告安岡正彦について
(一)一九九二年、当時同松ケ江南小学校校長被告川原正博は、原告安岡 正彦に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には『君が代』 を起立して歌うよう」職務命令を発した。
(二)一九九二年当時同松ケ江南小学校校長であった被告扇谷兼二郎は、 原告安岡正彦に対し、同年入学式において「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌うよう」職務命令を発した。
(三)一九九四年当時同松ケ江南小学校校長であった被告扇谷兼二郎は、 原告安岡正彦に対し、卒業式において「国歌斉唱時には『君 が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。

9.原告原田敬二について
(一)一九九二年当時同松ケ江南小学校校長であった被告川原正博は、原 告原田敬二に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌うよう」職務命令を発した。
(二)一九九二年当時同松ケ江南小学校校長であった被告扇谷兼二郎は、 原告原田敬二に対し、同年入学式において「国歌斉唱時には 『君が代』起立して歌うよう」職務命令を発した。
(三)一九九四年当時同小森江東小学校校長であった訴外福田修士は、原 告原田敬二に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。

10.原告導寺孝暁について
(一)一九九二年当時同松ケ江南小学校校長であった被告川原正博は、原 告導寺孝暁に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌うよう」職務命令を発した。 
(二)一九九二年当時同松ケ江南小学校校長であった被告扇谷兼二郎は、 原告導寺孝暁に対し、同年入学式において「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌うよう」職務命令を発した。

11.原告原博一について
(一)一九九一年当時同松ケ江南小学校校長であった被告川原正博は、原 告原博一に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には『君 が代』を起立して歌うよう」職務命令を発した。 
(二)一九九一年当時同松ケ江南小学校校長であった被告川原正博は、原 告原博一に対し、同年入学式において「国歌斉唱時には『君 が代』を起立して歌うよう」職務命令を発した。

12.原告油谷芳弘について
(一)一九九一年当時同松ケ江南小学校校長であった被告川原正博は、原 告油谷芳弘に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌うよう」職務命令を発した。
(二)一九九五年当時同大積小学校校長であった被告田郷利雄は、原告油 谷芳弘に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には『君が 代』を起立して歌うよう」職務命令を発した。

13.原告安倍和宏について
(一)一九九〇年当時同城野小学校校長であった原告安倍にとっては訴外 徳本正義(原告藤堂にとっては被告)は、原告安倍和宏に対 して、同年三月卒業式において、「国歌斉唱時には『君が代』 を起立して歌ってください。これは職務命令です」との職務 命令を発した。
(二)一九九〇年当時同城野小学校校長であった訴外徳本正義は、原告安 倍和宏に対して、同年四月入学式において「国歌斉唱時には 『君が代』を起立して歌ってください。これは職務命令です」 との職務命令を発した。
(三)一九九四年当時同城野小学校校長であった訴外石丸浩は、原告安倍 和宏に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には『君が代』 を起立して歌うよう」との職務命令を発した。

14.原告藤堂均について
(一)一九九四年当時同沢見小学校校長であった被告徳本正義は、原告藤 堂均に対し、同年入学式において「入学式に出席すること。 国歌斉唱時にはを起立して歌うよう」との職務命令を発した。

15.原告山根弘美について
(一)一九八五年当時同南小倉小学校校長であった被告門司驍武は、原告 山根弘美に対し、同年三月卒業式の職員会議において、「卒 業式の国歌斉唱時には『君が代』を起立して歌うように」と の職務命令を発した。
(二)一九八五年当時同南小倉小学校校長であった被告門司驍武は、原告 山根弘美に対し、同年四月入学式の職員会議において、「入 学式の国歌斉唱時には『君が代』を起立して歌うように」と の職務命令を発した。 (三)一九九五年当 時同清見小学校校長であった訴外三輪徹は、原告山根弘美に対 して、同年卒業式において「卒業式の国歌斉唱時には『君が代』を起 立して歌うように」との職務命令を発した。

16.原告稲葉とし子について 
(一)一九九五年当時同松ヶ江中学校校長であった訴外井上猛は、原告稲 葉とし子に対し、同年入学式において「国歌斉唱時には『君 が代』を心を込めて起立して歌うよう」との職務命令を発し た。
(二)一九九六年当時同松ヶ江中学校校長であった訴外井上猛は、原告稲 葉とし子に対し、同年卒業式において「国歌斉唱時には『君 が代』を起立して歌うよう」との職務命令を発した。

17.原告田中民平について
(一)一九八九年当時同千代小学校校長であった原告田中にとっては訴外 高橋義幸(原告稲田にとっては被告)は、原告田中民平に対 し、同年三月一八日卒業式当日の朝、「国歌斉唱時には『君 が代』を起立して歌ってください。これは職務命令です」と の職務命令を発した。
(二)一九八九年当時千代小学校校長である訴外高橋義幸は、原告田中民 平に対し、同年四月八日入学式当日、「入学式の国歌斉唱時 には『君が代』を起立して歌ってください。これは職務上の 命令です」との職務命令を発した。

  二、戒告処分と文書訓告及び厳重注意の制裁
1.被告市教委は、一九八九年七月二〇日付で、原告稲田純に戒告処分をなした。
2.被告市教委は、一九九〇年七月二〇日付で、原告安倍和宏に文書訓告の制裁 をなした。
3.被告市教委は、一九九一年七月二〇日付で、原告原博一に文書訓告の制裁を なした。
4.被告市教委は、一九九二年七月二〇日付で、原告安岡正彦及び原告原田敬二 に戒告処分及び原告導寺孝暁に文書訓告の制裁をなした。
5.被告市教委は、一九九三年七月二〇日付で原告石尾勝彦、原告友延博子及び 原告佐藤光昭に戒告処分、原告牟田口カオルに文書訓告の制裁をなした。
6.被告市教委は、一九九四年九月五日付及び九月六日付で原告稲田純、原告梶 川珠姫、原告石尾勝彦、原告牟田口カオル、原告安岡正彦及び原告原田敬二に 戒告処分、原告導寺孝暁及び原告安倍和宏に文書訓告の制裁、原告藤堂均に厳 重注意の制裁をなした。
7.被告市教委は、一九九五年七月二〇日付で原告井上友晃及び原告石尾勝彦に 戒告処分、原告稲葉とし子に厳重注意の制裁をなした。
8、被告市教委は、一九九六年七月一九日付で、原告井上友晃、原告石尾勝彦、 原告友延博子及び原告牟田口カオルに戒告処分、原告稲葉とし子に文書訓告の 制裁をなした。

  三、原告ういに対する不法行為
  1.はねかえす会に対する不当な対応
(一)はねかえす会は、一九八九年七月二〇日、原告稲田に対する処分(請求原因 第二の第2.の二の1)の理由説明と撤回を求めて被告市教委への請願行動を行 った。しかしながら、対応した被告市教委学務部の重富主幹は「あなた(原告稲 田)には詳しくお話しした。部外には処分の根拠や経過を明らかにするつもりは ない」としてはねかえす会の請願に対して誠実に対応をする義務を怠り、話し合 いの席を中座し、非常階段より逃げるという非常識な対応をした。
(二)同会は、同年九月一日、前回同様に被告市教委への請願行動を行った が、被告市教委は一カ所だけ開いた入り口ドアに人垣でバリケー ドをつくり、文書の受け取りをも拒み一切の対応を拒否した。
(三)同会は、一九九〇年七月三一日、七月二〇日付処分に対する「公開質 問状」を提出したが、対応した学務部重富主幹は、「公開質問状に ついては、市教委として回答する考えはない。この問題であなた方とお会 いする考えはない」と打ち切った。
(四)一九九一年七月二〇日、一九九二年七月二〇日と、被告市教委への請 願を再三 行ってきたが、被告市教委は一切応じず対応を拒み、窓口 を閉ざすばかりであった。連絡を取っても「対応するかしないかも含めて 検討する」といった回答をしたきり、一切の請願に対して逃げるか排除を 強制するかの対応を繰り返した。
(五)一九九三年七月二〇日、原告ら二〇名程度が被告市教委に請願に訪れ たところ、守衛長以下一〇数名の守衛が通路に立ち塞がり、原告ら が教職員課へいくことを実力で阻止しようとした。
 被告市教委は、市庁舎一四階フロアーすべての部屋にカギをかけ、教職員課の 出入り口側にスチールロッカー三台を横倒しにしてバリケードを築き、その背 後に教職員課以下教職員課の職員三〇数名を配置し、原告らの入室を拒み、バ リケード越しの対応において、原告らの「話し合いの場を設定してほしい」と いう要求に対して「話を聞く必要はない」として原告らの陳情の受付すら拒否 し、あまつさえ庁舎管理課職員を使って、原告らに対し退去要請を出させた。 また、学務部教職員課吉田課長は、守衛及び庁舎管理課職員の人壁越しに 「話す必要はない」として原告らの請願を不法に拒否した。
  2.原告北九州がっこうユニオン・ういの請願拒否
一九九四年九月に結成した原告ういは、「日の丸」「君が代」をはねかえ す会を引き継ぎ、継続して一九九五年七月二〇日、一九九六年七月二〇日、 これまでと同様に処分に対する請願を行ったが、被告市教委の対応は変わ らず、ドア前で立ち塞がったまま話し合いに応じなかった。
  3.「日の丸・君が代」を理由とした団交拒否
原告ういは一九九四年九月結成後、被告市教委へ要求書を提出し団体交 渉を重ねてきたが、一九九六年四月三〇日付要求書に対して、被 告市教委は、組合担当学務部主幹訴外小石原善徳をして、「『君 が代』処分を撤回することの要求を議題に上げないこと」という 不当な理由をもって、団体交渉を拒否し続けている。

第3、違法性

  一、「君が代」の憲法(国民主権・平和主義)違反
1.大日本帝国憲法下、日本はアジア諸国を侵略しアジア諸国民二〇〇〇万 人の命を奪い、占領した土地には「日の丸」を立て、アジア諸国民に天皇 への忠誠の証しとして「君が代」を歌わせた。
 侵略戦争の過程において学校儀式における「君が代」の果たす役割は肥大化 していった。学校への国家による皇民化教育が、個人の思想信条の抑圧の 上に、日本国民だけでなくアジア諸国・諸民族までに強制した結果として の侵略戦争があったのである。
2.わが国は、このような歴史の反省のうえに、日本国憲法において国民主権を 宣言し、天皇の地位を憲法で定められた国事行為だけを行う象徴として法定し たのである。
 また、現在もなお日本はアジア諸国から戦争責任を問われ続け、戦後補償問 題を解決しないままにあるのが現状である。「日の丸・君が代」への根強 い不信感は今なお現存しているのである。 
3.以上のような歴史的背景をもつ「君が代」の強制は、天皇制イデオロギーに よる国民統合という「愛国心」を要求するものと言わねばならない。国民主権 及び平和主義を原理とする日本国憲法の下、学校行事において天皇を賛美する 「君が代」を持ち込むこと自体、違憲・違法であると言わねばならない。

  二、「君が代」強制は思想・信条・信教の自由違反
1.憲法の基本原理は、平和主義、国民主権と並んで個人の基本的人権の尊 重を重視した。「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と定 めた憲法一九条が、人間の精神的活動の自由に関しての包括的・原則的な 保障条項であり、信教の自由、学問の自由、表現の自由などの精神的自由 の諸規範の根本である。とりわけ、「思想及び良心」は、世界観・人生観、 主義・主張、思想・信条など論理的価値判断を含め、個人のあらゆる内心 におけるものの見方、考え方を含むものである。
2.「思想・信条の自由」は、踏み絵のように何らかの行為を強制することによ って内心を推知しようとすることによって侵害される。したがってその反面に おいて、自己の思想及び良心の表明を強制されない自由、いわゆる「沈黙の自 由」が、保障の内容として確立しているのである。学校現場での卒業式・入学 式における「君が代」強制は、儀式への参加、起立、斉唱などの行為を求める 点において、明らかに思想・良心の自由を侵害する。そこでは、「沈黙の自由」 の保障も用意されておらず、違憲・違法である。
3.また、「君が代」が天皇と深く結び付いて「国歌」とされていることに照ら すならば、「君が代」強制は宗教性を帯びたものであり、「信教の自由」憲法 二〇条一項、二項に抵触するばかりでなく、公教育における宗教教育ないし宗 教活動を禁じた教育基本法九条二項にも抵触する。

  三、戦後教育法違反
   1.教育基本法違反
(一)民主憲法に法り教育基本法が制定され、戦後教育改革で最も重視され たのは、 公教育を国家行政の配慮する領域から国民の良心の自由の領域 に置き換えたこ とである。教育基本法第一条は、公教育の積極的機能を 個人の人格の完成だと し、そのことを通して個人の価値を尊び、自主的 精神に満ちた平和や真理、正 義を愛する国民を形成することを明確に定 めた。
(二)また、公教育において「君が代」という特定の思想をもつ歌を国が強制する ことは、教育基本法第一〇条の「教育は不当な支配に屈することなく、国民全 体に直接に責任を負って行われるべきものである」に違反する。これは、最高 裁(旭川学テ事件)で「法令に基づく教育行政機関の行為」であっても教育 基本法一〇条の「不当な支配」の主体となり得ると判示していることから も明らかである。
   2.教育行政における命令・監督・強制の違法 
 さらに戦後の教育行政制度改革は憲法の定めた地方自治の本旨を受け、 実施された。文部省の機構改革の根本方針は、戦前の中央集権的命令・ 監督行政を廃止し、教育・学術・文化について指導・助言を与え、これ を助長育成するサービス機関たらしめることであった。これらの趣旨は 「文部省設置法」において、「文部省は、その権限行使に当たって、法 律(これに基づく命令を含む)に別段の定めのある場合を除いては、行 政上および運営上の監督を行わないものとする」(文部省設置法第6条 2項)と定められている。この「文部省行政行為の本体は権力行使を伴 わない『指導助言』とする」という趣旨は、その後の法改正にもかかわ らず、今日の現行法上も「指導・助言」は行政行為の基本であることに 変わりはない。
 したがって、文部省による「君が代徹底通知」及び被告市教委の「四点指導」 と言う名の「命令・監督・強制」は明らかに「指導・助言」の域を超え違法で ある。いわんやその「四点指導」を受けてなされた校長による本件職務命令は、 「違反者」に法律上の不利益を課すことを前提とした「強制」に外ならず違法 性は顕著であると言わざるを得ない。
   3.学校教育法一八条6号違反
 原告らは(原告藤堂を除く)、学校教育法第一八条6号「教諭は児童の 教育をつかさどる」に規定された固有な教育権限の主体であり、教育指 導にあたっての自主性を保障された教諭である。個々の教諭は、自らが 指導する子どもたちの教育及び学校での教育のあり方に責任を負ってお り、その権限行使の自立性を保障されている。校長にはその権限はなく、 職務命令によっても教員の教育権限を規制することなどできようがない。 したがって、校長による卒業式・入学式という学校行事における「君が 代」斉唱の実施に関する本件職務命令は、教諭の固有な権限を侵害する もので違法、不当である。

  四、請願法違反
1.違法行為三で述べた請願は、被告市教委に対する請願であり、請願法第 一条にいう「別に法律に定める場合」に該当しないので、請願法に基づくも のとなる。
 請願法第二条は、「請願の方式」として「請願は、請願者の氏名(法人の場合 はその名称)及び住所(住所のない場合は居住)を記載し、文書でこれをしな ければならない」と定められているが、原告ういらが持参した書面には請願者 の名称及び住所が明確に記載されており、右方式に適合していることはいうま でもない。
 請願法3条には「請願書の提出先」を「請願の事項を所管する官公署にこれを 提出しなければならない」と定めているが、請願の事項を所管する官公署が被 告市教委であったことは、これまた明らかである。
 つまり、本件請願は請願法に適合する請願であったことに疑いはない。
2.しかるに、被告市教委はスチールロッカーを横倒しにしてバリケード 築くなどして、原告らの請願書の受理すら拒否した。これは、明 らかに請願法第5条に定める「請願の処理」つまり「この法律に適合する 請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない」 に違反するものである。これらの違法は、ひいては憲法一六条が定める 「請願権」を侵害するものである。

  五、原告ういに対する不当労働行為
1.地方公務員法第五五条一項違反
 原告ういは一九九四年九月結成以来、被告市教委への請願行動を行って きたが、「日の丸」「君が代」をはねかえす会同様、不当に請願を拒否 されている。これは、四で述べた請願法違反のみならず、原告ういへの 遅効報五五条第一項「適法な交渉の申し入れがあった場合においては、 その申し入れに応ずべき地位に立つものとする」に違反し、不当労働行 為にあたり、違法、不当なものと言わざるを得ない。
2.「日の丸・君が代」を理由とした団交拒否
 被告市教委は、原告ういが要求する「君が代」処分を撤回することが管 理運営事項であるとして、「これを議題から下ろさない限り交渉に応じ ない」として団体交渉を拒否している。
 しかしながら「君が代」処分を撤回することは、職員の勤務条件に関する事柄 であり、何ら管理運営に関する事項に該当しないので、被告市教委の「日の丸 ・君が代」を理由とした団交拒否は地方公務員法五五条第一項に違反し、ひい ては、憲法二八条に保障された労働者の団結権を侵害する違法不当なものと言 わざるを得ない。

  六、処分基準の不当性
 本件処分理由は「校長の職務命令違反」であるが、その本来の処分事由は 卒業式・入学式における「君が代」斉唱時に着席していたことであること は言うまでもない。全国的にも「日の丸・君が代」の強制は目に余るもの がるが、被告市教委のように、着席だけを理由に懲戒処分を毎年のように 乱発している教育委員会は全国でも例を見ないものである。
 本件処分は被告市教委による全国でも突出した処分権の濫用であり不当なもの であると言わざるを得ない。

第4、損害

一、原告らは、本件被告らによる本件各不法行為により著しい精神的苦痛を 被った。これをあえて金銭に換算すれば職務命令及び厳重注意一件につき 金一〇〇万円、文書訓告一件につき二〇〇万円、戒告処分一件につき三〇〇 万円を下らない。
二、よって、本件各不法行為により、原告稲田は計九〇〇万円、原告井上 は計八〇〇万円、原告梶川は計五〇〇万円、原告石尾は計二〇〇〇 万円、原告友延は計一〇〇〇万円、原告佐藤は計五〇〇万円、原告牟田口 は計一三〇〇万円、原告安岡は計九〇〇万円、原告原田は計九〇〇万円、 原告導寺は計四〇〇万円、原告原は計四〇〇万円、原告油谷は計二〇〇万 円、原告安倍は計七〇〇万円、原告藤堂は計二〇〇万円、原告山根は計三 〇〇万円、原告稲葉は五〇〇万円、原告田中は計二〇〇万円の損害を被っ た。
 原告ういは被告市教委の第二の第2の三の各不法行為により一項につき三〇〇 万円、計三〇〇万円の損害を被った。
三、原告らは、これらの損害のうちその内金としてその一〇〇分の一(但 し、石尾原告については一円)を本件各不法行為を働いた各被告 校長ら並びに各校長ら及び被告市教委の職員の雇用主である被告 北九州市に請求するものである。


第三、処分取消請求

第1、本件各処分

 第一の二で述べたとおり。

第2、違法性

 第一の三で述べたとおり。
 したがって、原告らの行為は地方公務員法二九条一項1号3号に該当せず、 本件処分は違法である。

第3、人事委員会不服申立とその結果

 一、裁決に対する不服
 原告稲田純についての一九八九年人事委不服申立事案第3号については、 一九九六年九月一一日付で裁決が出されたが、裁決に不服であるので 本訴に及ぶものである。

 二、三カ月の経過
1.原告安岡正彦、原告原田敬二についての一九九二年不服申立事案第1号 2号については、現在係争中であるが、三カ月を過ぎてもなお裁決が なされていない。
2.原告石尾勝彦、原告友延博子、原告佐藤光昭についての一九九三年不服 申立事案1号〜4号については、現在係争中であるが、三カ月を過ぎ てもなお裁決がなされていない。
3.原告稲田純、原告梶川珠姫、原告石尾勝彦、原告安岡正彦、原告原田敬 二、及び原告牟田口カオルについての不服申立事案第3号〜8号は、 現在係争中であるが、三カ月を過ぎてもなお裁決がなされていない。
4.原告井上友晃、原告石尾勝彦の一九九五年不服申立事案1号2号につい ては、現在係争中であるが、三カ月を過ぎてもなお裁決がなされてい ない。
5.原告井上友晃、原告石尾勝彦、原告友延博子、及び原告牟田口カオルに ついての一九九六年八月一日付不服申立事案1号〜4号については、 申立から三カ月を過ぎても答弁書すらも出ていない。
 三、よって、行政事件訴訟法八条二項1号に基づき、各処分の取り消しを求め 本訴に及ぶものである。

第三、訴額

 第1.国家賠償請求の各原告らの損害額は第二の第4損害に基づき、合計一億 一円となり、その内金として一〇〇分の一の一〇〇万一円が訴額となる。
 第2.処分取消請求の訴額は、戒告処分一件あたり算定不能として訴額九五万 円、一八件の合計で一七一〇万円となる。  
 第3.したがって、訴額の合計は1と2で一八一〇万一円となる。

第四、結語

 原告らは、学校労働者としての自らの思想・良心の自由を確立し、守ることに よって、国家からの管理と統制からの縛りを解きほどこうとするものたちであ る。  本件処分及び職務命令は、戦後民主憲法における国民主権、平和主義、基本的 人権の尊重を踏みにじる「君が代」を学校教育の場に強制し、あらゆる教育、 個人への管理・統制をなしていることに間違いない。また、処分によって、公 教育に携わる学校労働者の自由と働く権利を奪うものである。このことは、ひ いては、国家による不当な教育への支配となり、教育の自由を侵害し、子ども たちの自由と個性の保障を奪うものである。 原告らは、この「君が代」の強 制・処分を座視することなく、本裁判提訴によって学校現場に内心の自由を求 め、「君が代」強制を憲法に問うていくつもりである。


証拠方法
 口頭弁論において提出する。

添付書類<
 職員団体登録申請書
 北九州がっこうユニオン・うい組合規約

    以上


当事者の表示


〔住所記載略〕
                    原 告  稲田 純
〔住所記載略〕
                    原 告  井上 友晃
〔住所記載略〕
                    原 告 梶川 珠姫こと
                        神谷 珠姫
〔住所記載略〕
                    原 告  石尾 勝彦
〔住所記載略〕
                    原 告  友延 博子
〔住所記載略〕
                    原 告  佐藤 光昭
〔住所記載略〕
                    原 告  牟田口 カオル
〔住所記載略〕
                    原 告  安岡 正彦
〔住所記載略〕
                    原 告  原田 敬二
〔住所記載略〕
                    原 告  導寺 孝暁
〔住所記載略〕
                    原 告  原  博一
〔住所記載略〕
                    原 告  油谷 芳弘
〔住所記載略〕
                    原 告  安倍 和宏
〔住所記載略〕
                    原 告  藤堂 均
〔住所記載略〕
                    原 告  山根 弘美
〔住所記載略〕
                    原 告  稲葉とし子
〔住所記載略〕
                    原 告  田中 民平
〔住所記載略〕
                    原 告  北九州がっこうユニオン・うい
                    右代表者 書記長 竹森 真紀

〔住所記載略〕
                    被 告  北九州市
                         右代表者市長   末吉 興一
〔住所記載略〕
                    被 告  北九州市教育委員会
                         右代表者教育委員長 池田 弘
〔住所記載略〕
                    被 告  高橋 義幸
〔住所記載略〕
                    被 告  平田 章
〔住所記載略〕
                    被 告  秋永 知之
〔住所記載略〕
                    被 告  村尾 稔
〔住所記載略〕
                    被 告  山本 純二
〔住所記載略〕
                    被 告  川原 正博
〔住所記載略〕
                    被 告  扇谷 兼二郎
〔住所記載略〕
                    被 告  田郷 利雄
〔住所記載略〕
                    被 告  徳本 正義
〔住所記載略〕
                    被 告  門司 驍武