145回-参-予算委員会-09号 1999/03/03


〔前略〕


○矢野哲朗君 私から御披露申し上げます。
 過去において、学校の校長先生が六名、なおかつ教諭六名、そして県庁の教育委員会の職員が二名、計十四名の方が自殺に追いやられた現状があるというふうに私なりに調べさせていただきました。この実態をどう考えておられるか、ひとつ文部大臣、お願いします。

○国務大臣(有馬朗人君) たびたび申し上げますように、大変痛ましいことが続いていると思っております。
 これをどういうふうにしていくかということは今後大きな問題だと思いますけれども、文部省といたしましては、やはり国際社会において尊敬され信頼される日本人として成長をするためには、学校教育において国民としての基本的な礼儀作法として、日本の国旗・国歌だけではなく、諸外国の国歌・国旗に対しても正しい尊敬の認識とそれを大切にしていく態度を教育していかなければならないと思っております。

○矢野哲朗君 どうも答弁がかみ合いません。
 この件につきまして、昨年の常会での集中審議で、我々の同僚であります小山孝雄議員から、広島は大変教育現場が荒廃している、その一例として広島の教育現場の問題提起がありました。そのことが一つの波紋になって、順次県民にも広がって意識が高まって、ことしは改善の兆しがついたかなというふうな一つの状況下での事件であります。
 そして、この経過を私なりに調べさせていただきました。二月二十八日、自殺される直前、二十五、二十六、二十七、この三日間、教職員組合や部落解放同盟の皆さんから計五回にわたって団体交渉を受けた、こういうことであります。そして本人は、もう大変しんどいんだ、だめだと、こういうふうな発言まで残されて自殺に追いやられたと、こういう実態があるようであります。
 加えまして、昨日、葬儀がとり行われました。高校時代からこの校長先生と大変親友であった東風上清剛、やはり校長先生であります、弔辞の中で、あなたは口が裂けても言えないことがあると大変苦しんでいたというふうな、この弔辞の中に一文を述べられました。
 ですから、今調べ中だというふうな話、私でもここまで確認ができたんですから、文部省でもって今調査中という話は非常に無責任だと思うのであります。ちょっとお願いします。

○国務大臣(有馬朗人君) 先ほど調査中と申し上げたのは今回の御不幸な事件でございますが、既に平成十年四月二十七日、二十八日に広島県での実地調査は行っております。また、昨年五月二十日に広島県教育委員会に対し、是正の指導を行ってまいりました。
 これを受けて、広島県教育委員会において各種会議等の場を通じて、県立学校長、市町村教育長、小中学校長に対し、国歌・国旗の適切な取り扱いについて指導を行うとともに、十二月十七日には県教育長名義の指導通知を発出するなどの努力をしております。そしてこの二月のことに至ったわけであります。しかし、この指導で随分ことしは国旗が上げられ、国歌が斉唱されたと私は報告を受けております。
 今回のこの事件に関してさらなる調査を今お願いしているところです。

○矢野哲朗君 今回の事件でもって、新聞報道がされております。
 広島県の高校教職員組合ですか、県の教育委員会が日の丸・君が代について職務命令を出した結果、学校現場が混乱をしているというようなコメントが新聞記事に載っております。このコメントに対して文部大臣、いかが考えられますか。

○国務大臣(有馬朗人君) 先ほども申し上げましたように、日本人として国歌・国旗に対する正しい認識を持つということは、教育において重要なことと思っております。これは、諸外国の国旗・国歌に対する尊敬の念を養成することと同じであります。こういう国民としての基本的な礼儀作法を身につけるべく今後も指導し、教育をしてまいりたいと思っております。

○矢野哲朗君 ですから、このコメントである学校現場が混乱しているということは、これは今の文部大臣の発言からすると大変遺憾だ、整然と静粛に行われてしかるべしだと、こういう御意見でありますね。

○国務大臣(有馬朗人君) 今までそういうふうにお返事を申し上げたと思っておりますけれども、もっとはっきり言えば教育現場が混乱を起こさないように今後も学習指導要領の方針に従ってやっていただきたいと思っております。

○矢野哲朗君 この事件を大変痛々しい事件として二度と起こしたくないな、こんな気持ちからきのうの総理にかわる官房長官の発言があったと思います。まだ官房長官いらっしゃっていないものでありますから総理に直接お伺いしたいと存じます。
 我が同僚であります狩野安議員から、先般の総括質疑でひとつ法制化してみたらどうなんだというふうな質問があったと思いますけれども、当時はまだそこまでは考えていませんというふうな一つの答弁があったわけであります。しかしながら、きのう官房長官の記者会見の席上、考えてみたい、積極的に考えるというふうな発言があったようでありますけれども、そこに至る経緯、ひとつ総理のお気持ちをお伺いしたいと思います

○国務大臣(小渕恵三君) まず今般、広島県下で長い間教職におられ、校長先生として職務に精励された石川校長先生がみずから命を絶つということになりまして、まことに残念なことであり、悲しむべきことでございます。改めて先生に深い哀悼の意を表し、謹んで御冥福をお祈りいたしたいと思います。
 そこで、今、文部大臣からも報告ありましたが、私ども新聞紙上その他で知るところによりますと、いわゆる国旗・国歌の掲揚と斉唱に関しまして教育委員会と組合とのはざまで大変悩まれ、その結果がこうした悲劇になったということをお聞きをいたしました。
 そこで、お尋ねの点でありますが、私は二月二十五日の当委員会におきまして、長年の慣行である日の丸・君が代が国旗・国歌であるとの認識が確立し、広く国民の間に定着しておりますことから、現時点において政府として国旗・国歌を法律によって制度化する考えはないと実は御答弁申し上げました。
 しかし、改めてよくよく考えてみまして、二十一世紀を迎えるに当たりまして、国旗・国歌につきましても法律としてより明確に位置づけることについていろいろと意見を聞くなどして検討すべきでないかとの思いに至りました。今回、国旗・国歌についての法制化も含め検討を行うよう官房長官に指示したところでございます。
 この前の御答弁の中でも、実は各国の例を挙げまして、法制化しておられることにつきましての御紹介も、御存じだとは思いましたがいたしました。これは、国家として成立過程におきましていろいろ国々事情が違いますので、そういった意味で改めて国旗というものを極めて象徴的にとらえて、これを国家統合の象徴として考えておる国においてははっきりと憲法にも明記しておるというような国まであるわけでございます。
 ただ、我が国としては、従来、国民の中にも定着をいたしておりますので改めてこの法制化について現段階ではと、こう申し上げたわけでございますが、今申し上げたように改めてこの問題につきましても法制化も含めまして検討をいたしていくべきではないか、こういうことで官房長官に指示し、そして今検討を始めさせていただいております。
 広島県での事件は、卒業式の国歌・国旗等の取り扱いをめぐりましてこうした痛ましい事件が発生したわけでありまして、こうした事件の背景として果たしてこうしたはざまに挟まれていろいろ御苦労されたことが、教育指導要領だけでこうしたことを校長先生に負荷することがよろしいのかどうか、こういうことを考えまして、諸外国の制度も参考にしつつ法制化について御意見もお聞きをして検討してみたらということで指示したところでございます。
 前回の答弁でも申し上げましたが、各党の中にも、この問題についてきちんと結論をつけるべきだという御主張をされているところもありますし、与党自民党等におきましてもそうした議論が長らくされてきたことも承知をいたしております。
 時あたかも次の世紀を迎える段階でございますので、この点について、内閣としても考え方を取りまとめて国民的世論を背景にいたしまして一つの結論に導くべきときが来たのではないか、こう判断をさせていただいたような次第でございます。

○矢野哲朗君 総理の決断を私も評価させていただく一人であります。
 しかしながら、けさほどのNHKの報道がまた違った報道がありまして、法制化はするけれども、いろいろな考え方がそれぞれ会派ごとにあるものだから、直接教育の現場に持ち込まないなんということを前提に法制化したいなんというNHKの報道がありました。
 ですから、私は唖然としたのでありますけれども、現時点でも指導要領に基づいて、以前中島文部大臣のときだったですか、慣習法上国旗であり国歌である、日の丸が、君が代がというふうな予算委員会での答弁があったと思います。それから明確になりまして、当然学習指導要領で卒業式、入学式には国旗を上げて君が代を歌おう、こういうことが載っておるわけでありまして、今さら片や法制度でしっかり定めますよ、片や教育現場に持ち込みませんよということになりますれば、かえって現場に混乱を生じると私は感じたわけであります。
 その辺を改めてお伺いしますけれども、今現在ですら教育の現場でやるべきだと指導要領でうたっているわけでありますから、当然のことながら君が代・日の丸が国旗・国歌である、しからばそれを励行する。当たり前の話だと思うのであります。その辺での確認をさせていただきます。

○国務大臣(有馬朗人君) 国歌・国旗につきましては、長年の慣行により日の丸・君が代が国歌・国旗であるとの認識が既に確立しております。そしてまた、広く国民の間にも定着しております。したがいまして、学校においても、各教育委員会及び学校長の努力により定着が図られてきていると考えております。
 今回、二十一世紀を迎えるに当たって、国歌・国旗についても成文法としてより明確に位置づけることについて検討する時期に達したのではないかと考えられることなどから、国歌・国旗の法制化を含め検討に着手することになったものと承知しております。
 いずれにいたしましても、国歌・国旗についての法制化も含めた検討は政府全体にわたる事柄であり、今後、政府部内の検討に参画するなど、適切に対応してまいりたいと思います。
 なお、かつて国会において村山元総理、それから与謝野元文部大臣の答弁を整理したものがございますが、それをあえてここで読み上げさせていただきます。
 一、学習指導要領は、学校教育法の規定に基づいて各学校における教育課程の基準として文部省告示で定められたものであり、各学校においてはこの記述に基づいて教育課程を編成しなければならないものである。
 二、学習指導要領においては、「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」とされており、したがって校長、教員はこれに基づいて児童生徒を指導するものである。
 三、このことは児童生徒の内心にまで立ち入って強制しようという趣旨のものではなく、あくまでも教育指導上の課題として指導を進めていくことが必要である。
 そういうわけで、文部省ではこの方針に従って学習指導要領について今後も指導を続けるつもりであります。

○矢野哲朗君 広島県では、卒業式が公立の中学校が三月三日と三月十日に集中しているそうであります、公立小学校は三月二十日と三月二十四日。同じような問題で悩んでいらっしゃる校長先生がたくさんいらっしゃると思うのであります。今の文部大臣の明確な解釈ですか、それに基づいてしっかりやっていただくような道筋ができたかなと私は考えていますけれども。
 加えまして、あと一度、きょう私は、誤解を生むようなNHKの報道があったわけでありますから、このことについては強くひとつ文部省からも、ああいう報道はちょっと誤解を生むぞというふうなことでの一つのクレームを申し、なおかつ訂正をひとつしてもらいたいと思うのでありますけれども、いかがですか。

○国務大臣(有馬朗人君) 先ほどはっきり申し上げたとおりでございますが、これまで広島県においては、卒業式、入学式における国旗掲揚、国歌斉唱が学習指導要領に沿って十分実施されてはいなかったかということがございまして、文部省といたしましては適正な取り扱いについて既に指導を行ってきているところでございます。
 学習指導要領に基づく国歌・国旗の適正な取り扱いがなされるよう文部省としては引き続き指導していく所存でございますし、またマスコミ等々に対してはこういうことをはっきりと言おうと思っております。

○矢野哲朗君 最後にお願いをしておきます。このような痛々しい事件が二度と起こらないようにひとつ最大の努力をいただきたい。心から御期待を申し上げたいと思います。


〔後略〕